「アルケミスト 夢を旅した少年」- 私は私を思い出す

アルケミスト 夢を旅した少年」読了。

 

サンチャゴという1人の羊飼いの少年のお話。

前半は自分とサンチャゴを重ね合わせるようにして読んでいました。

サンチャゴの気持ちがとてもわかる。私がここにいる!と思って泣きたくなりました。

ページ数は多くないのですが一度に読み切るのが勿体無い気がして、少しずつ4日かけて読みました。

「これは重要な本だ。でも本当にイライラする本だな」「この本は、世界中のほとんどの本に書かれていることと同じことを言っている」「人は自分の運命を選ぶことができない、と言っているのだよ。そして誰もが世界最大のうそを信じている、と言っている」
「それはこうじゃ、人は人生のある時点で、自分に起こってくることをコントロールできなくなり、宿命によって人生を支配されてしまうということだ。それが世界最大のうそじゃよ」

歳を重ねていくと不思議なことに、これは自分が本当にしたかったことではないのではないかと疑い、何かを諦めようとすることがあります。初めの目標をすっかり忘れて、違うことが真の目的かのようにすげ変わってしまうこともあります。

心当たり大あり。

それは失敗して傷つく恐怖に負けた結果でもあり、また自分の心の声を無視した結果でもあります。そして不意の反逆に遭う。

「誰でも若い時は自分の運命を知っているものなのだ。まだ若い頃は、すべてがはっきりしていて、すべてが可能だ。夢を見ることも、自分の人生に起こってほしいすべてのことにあこがれることも、恐れない。ところが、時がたつうちに、不思議な力が、自分の運命を実現することは不可能だと、彼らに思い込ませ始めるのだ」

将来に悩む若い子に、「あなたには無限の可能性がある」と伝えたことがあります。すると彼女は「だから迷っているのだ」と返しました。自分の可能性を理解している彼女は聡明だと思います。彼女が可能性から夢を掴み取り、実現していたらいいなと思います。

 

アルケミストでは「前兆」「大いなる魂」という言葉がたくさん出てきます。これらの言葉は後半に進むにしたがって増えていきます。

「前兆」は常に至る所にあるということ。

「大いなる魂」は自分の心が知っている、つまり答えはすでに自分の中にあるから、自分の心の声に耳を傾け続けることが大事だと言っています。そのためには行動すること、それとやる気と勇気が必要だと。

サンチャゴが旅をする中で、サンチャゴの父親、タリファのパン屋、クリスタル商人、イギリス人など複数の登場人物と出会います。彼らは自分の運命の実現を諦めた人間として描かれています。

サンチャゴをお店に雇い入れたことでクリスタル商人の商売は上向きになりますが、逆に自分が不幸になっていくと言います。彼はサンチャゴと出会う前から「今となっては、何かを変えようとしても、もう遅すぎた」と思っていました。人生が転換してからもその思い込みは強固で、戸惑いを感じながらも現状を変える気がなく今のままがいいと思っています。

でもイギリス人は彼とはまた違う答えを出します。失敗を恐れていたことに気づき、鉛を金に変えるために硫黄の分解を始めます。10年前に始められたことを今やり始めたけど、20年も待たなかっただけ幸せだと言いました。

中盤から、サンチャゴと私は全く違うことを自覚しました。私は本当に欲しい未来に目を向けず、心の声を無視して逃げ続けたからです。

彼が夢の実現に向けて近づけば近づくほど、物事がよけいに困難になってきていた。年老いた王様が「初心者の幸運」と呼んでいたものは、もはや働かなくなっているようだった。夢の追求の過程で、彼はやる気と勇気を常にテストされていた。「すべての探求は初心者のつきで始まる。そして、すべての探求は、勝者が厳しくテストされることによって終るのだ」

やり始めた時は追い風があるけれど、その後は当たり前ですが、努力が必要なんですね。でもサンチャゴには錬金術師がいたように、決して一人きりではないと思います。

「傷つくのを恐れることは、実際に傷つくよりもつらいものだー夢を追求している時は、心は決して傷つかない」「学ぶ方法は一つしかない」「それは行動を通してだ」

私が個人的に気に入っている一文です↓

錬金術師が鉛から金を生成したとき、サンチャゴは彼に「私もいつか、この術を習えますか?」と尋ねます。すると錬金術師は「これはわしの運命だ。お前の運命ではない」と答えます。

誰かを羨むことってあると思います。

でもそれは私じゃない。私がすべきことは別にちゃんと用意されている。

自分の運命を実現することは、人間の唯一の責任なのだ。

自分の運命ってなんだろう。アルケミストを読み進めていくうちに、遠くに置いてきて忘れてしまっていた自分を思い出してきました。

「結局、人は自分の運命より、他人が羊飼いやパン屋をどう思うかという方が、もっと大切になってしまうのだ」

「僕は他の人と同じなんだ。本当に起こっていることではなく、自分が見たいように世の中を見ていたのだ」

「おまえが自分の内にすばらしい宝物を持っていて、そのことを他の人に話したとしても、めったに信じてもらえないものなのだよ」

他の者の運命をじゃまする者は、自分の運命を決して発見しはしない

自分がどうしたいかは結局自分で決めなければならない。自分の人生は自分で舵を取らなければならない。誰も責任なんてとってくれない。それなら自分がやりたいことを精一杯やるのが良いと思います。失敗したらまたやり直したらいいんです。失敗するくらいならしなければ良かったと思うこともあるかもしれないけれど、1つの立派な経験でもあります。日本は失敗した人に厳しいですが、時代は少しずつ変わってきていると感じます。そして生きていくためのセーフティネットはそこにアクセスできればある程度機能していると思います。自分が自分でいることを諦めない限り大丈夫。そのためには心の声を聞き続けることが大事。底までたどり着いたらあとは浮上していくだけです。

 

サンチャゴは無事ピラミッドに辿り着くのか、夢で見たものを手に入れることができるのか、ファティマとの結末はどうなるのか。

人生に行き詰まった時、自分らしさって何だろうと「私は私を思い出す」

サンチャゴの旅を通じて本来の自分を取り戻すきっかけになる一冊だと思います。

あとがきに作者のパウロ・コエーリョの略歴が説明されていましたが、面白い人生を歩んでいました。サンチャゴには作者自身が投影されているのかもしれません。

 

読んで良かったです。

気になられた方は是非読んでみてください。